
加賀逆立ち狛犬は金沢逆さ狛犬とも称され、加賀地方北部を中心に石川県内に数多く確認される。ほとんどは神社の参道に設置されているが、参道から外れているものや、拝殿内に置かれているものもみられる。希であるが、寺院の参道などにも作例が確認される。精査していないので実数を確定できないが、暫定数として参道狛犬が120対で、その他に特例がいくつかみられる。また少数であるが、富山県内や福井県内にも同様の作例が確認される。
金沢市城南2丁目の藤棚白山神社の拝殿内に、この逆立ち狛犬が納められている。普段は施錠されているので目にすることはないが、祭礼時などに開錠されている。以前は参道に設置されていたのだが、新しく作られた狛犬を参道に設置する際に拝殿内に納められた。
石材は滝ケ原石(小松市滝ケ原町で産出される淡青色凝灰岩)とみられ、阿形の口の部分が欠損している。拝殿内に窮屈に納められているので、右側の吽形の台座の裏面および右側面、左側の阿形の台座(裏面が手前に置かれている)の正面および右側面を確認できない。
吽形の台座 正面「奉納」、左側面に銘なし。
阿形の台座 裏面「明治廿四年/井波六三郎/浅田初三郎」、左側面に銘なし。
台座の確認できる面に石工名は刻まれていないが、その手法などから由野伊三郎ではないかと考えられる。由野伊三郎の逆立ち狛犬は、金沢市寺町の諏訪神社と白山市(旧松任市)八田中町の八幡神社にもみられる。また富山県南砺市(旧福野町)安居の高野山真言宗安居寺境内の花山法皇像も伊三郎の作である。